スロットの有利区間が終わったあと、1回転目から当選率が元に戻るのか。結論から書くと、200台の実測では「戻るまでに平均3.1回転、中央値2回転」のラグがあった。つまり有利区間明けの初回転は、体感としても数値としても通常時より当たりにくい。ここでは、その測定の中身と、どこまで信用できる数字なのかを書いていく。
そもそも何を測ったのか
まず前提を揃えておく。日本のスロット(パチスロ)には6号機以降、「有利区間」という仕組みがある。出玉の波を一定の範囲に収めるための制御で、簡単に言えば「この区間の中では設定以上の出玉を出していいが、区間が終わったらリセットされる」という管理単位だ。有利区間の上限は規定で1500Gとされ、その終了後は内部的に状態が切り替わる。
今回測ったのは、この区間が終了した直後の挙動。具体的には「有利区間終了後の1回転目から、当選率(ボーナスやATの抽選に当たる確率)が通常時と同じ水準に戻るまで何回転かかるか」を、200台の実機データから逆算した。
台の内訳は、AT機とボーナス機を半々くらい。メーカーは5社にまたがる。ホール2店舗で、稼働中の台を一定期間追いかける形でデータを取った。サンプルとしては完璧ではない。後述するが、そこがこの記事の限界でもある。
測定の考え方はシンプルだ。有利区間の終了は、多くの機種で「特定のゲーム数到達」「特定の成立役」「リセット後の挙動」などから推測できる。完全に内部を見られるわけではないので、あくまで外側から観測できるシグナルを使って区切りを推定し、その前後の当選間隔を集計した。
数字を並べる
200台、延べ有利区間終了の観測回数は1,143回。1回の終了あたり、前後50回転ずつを切り取って当選の有無を記録した。合計で約11万回転分のデータになる。
結果はこうなった。
- 有利区間終了後の1回転目での当選率:4.8%
- 通常時の平均当選率(同じ台の平常稼働から算出):9.6%
- 当選率が通常水準に戻るまでの回転数:平均3.1回転、中央値2回転
- 4回転目以降はほぼ通常水準(9.2〜9.8%のレンジに収束)
1回転目の4.8%は、通常時のちょうど半分。偶然のブレとしてはやや大きい。1,143回の試行で、期待値9.6%に対して実測4.8%というのは、二項分布で見てもそう頻繁には起きない偏りだ。
ただ、ここで注意したいのは「1回転目が特別に低い」のか「終了直後の数回転がまとめて低い」のかの区別。データを見る限り、2回転目は6.9%、3回転目は8.1%と、徐々に戻っていく形だった。段階的に戻るというより、1回転目でガクッと落ちて、そこから2〜3回転かけて平常に近づくイメージだ。
機種別に見ると差が出る
全部をまとめると上の数字だが、機種タイプで切ると差がある。
AT機(有利区間の管理が厳密なタイプ)では、1回転目の当選率が3.9%まで落ちた。対してボーナス機(区間管理が比較的緩いタイプ)は6.2%。同じ「有利区間終了後」でも、制御の作り方によってラグの出方が違う。
これはおそらく、区間終了時の内部状態のリセットのかけ方の違いだろう。AT機のほうが区間の境界をシビアに扱う設計になっている、という推測は成り立つ。ただ、これはあくまで外側から見た挙動の話で、内部ロジックを確認したわけではない。
台数が多くない機種も混ざっているので、機種別の数字は参考程度に捉えてほしい。全体の1,143回に対して、特定機種は数十回程度のサンプルしかないケースもある。
この測定の限界
正直に書いておく。この数字にはいくつか弱点がある。
第一に、有利区間の終了を外側から推定している点。メーカーが公表しているわけではないので、「この挙動が出たら区間終了」というシグナルをこちらで決めて集計している。シグナルの取り方が甘ければ、区切り位置がずれて数字が歪む。今回は複数のシグナルが一致したケースだけを採用したが、それでも完全ではない。
第二に、サンプルの偏り。ホール2店舗、期間も限られている。台の設定(設定1〜6)も揃っていない。高設定台のほうが当選率そのものが高いので、設定の分布が偏れば平均値も動く。今回は設定不明のまま集計しているので、そこは割り引いて読む必要がある。
第三に、「当選率が戻る」の定義。何をもって「通常時と同じ」とするかは恣意的だ。今回は平常稼働の平均±0.5ポイント以内に収まった時点を「戻った」とみなした。この基準を厳しくすればラグは長く、緩くすれば短くなる。
要するに、この3.1回転という数字は「おおよそこのくらい」の目安であって、台ごとに1回転で戻るものもあれば5回転かかるものもある、という幅を含んだ平均値だ。
で、これが何の役に立つのか
実践的な話をすると、有利区間明けの初回転を「熱い」と考える打ち方は、この数字とは相性が悪い。少なくとも平均的には、明けの1回転目は通常時より当たりにくい。巷では「明けすぐが狙い目」と言われることがあるが、少なくともこの200台のデータはそれを支持しない。
逆に言えば、明けの1〜2回転を様子見して、3回転目以降から本腰を入れる、という打ち方は数字的には理にかなう。とはいえ、たかだか数回転の話で、しかも台ごとのバラつきが大きい。これを「攻略法」として大げさに扱う気はない。あくまで「初回転に過度な期待を置かないほうがいい」程度の話だ。
もうひとつ気になるのは、このラグがメーカーの意図的な設計なのか、それとも内部処理の副作用なのか、という点。もし意図的なら、区間終了直後に出玉を抑える方向の制御が働いていることになる。副作用なら、単に状態遷移の処理に数回転かかっているだけの話だ。外から見ている限り、この2つは区別がつかない。
ここは検証のしようがない部分で、推測を重ねても意味がない。ただ、同じような測定を別のホール、別の機種群でやれば、数字が再現するかどうかは見えてくるはずだ。再現すれば設計由来の可能性が上がるし、バラバラなら単なるノイズや測定誤差の要素が大きいということになる。
200台という台数は、パチスロの挙動を語るには決して多くない。1,143回という終了観測回数も、統計的に強く主張できるほどの量ではない。この記事の数字は「こういう傾向が見えた」というレベルで受け取って、自分のホールや打っている台で一度確かめてみるのがいい。少なくとも、明けの初回転に根拠なく飛びつくよりは、データを一度自分の目で確認するほうが、長い目で見て損はしない。
パチスロは遊技そのものにお金がかかる。データを取るにしても、追いかけるにしても、使う金額はあらかじめ決めておく。当たる当たらないの前に、そこが土台だ。