表題の数字を先に出す。サッカーの1X2を3日間、同じ賭け金・同じ絞り込み条件で回したとき、引き分け保険(ドロー時に賭け金を返す、あるいは損失を相殺するオプション)を付けていた期間の回収率は94.2%、外した期間は88.1%だった。差は6.1ポイント。母数は3日で287ベット、うち保険対象になり得たドロー決着が31試合。回収率が6%落ちたのは「読みが外れた」からじゃなく、保険というクッションを自分で外したからだ、というのがこの記事の主張だ。ちなみにこの287ベット、1ベット平均は3,200円なので総賭け金は約91万8,400円。6%の差はおよそ5万6,000円。3日でこれだけ動く。
まず「保険を外す」が何を意味するか整理する
日本のブックメーカーや海外サイトでスポーツベッティングをやっていると、ドロー保険あるいは引き分け返金(Draw No Bet的なもの、あるいは「引き分けなら stake back」系のプロモ)を目にする。呼び方はサイトごとにバラバラで、実装も3種類くらいに分かれる。
1つはプッシュ扱い。1X2でドローに賭けていれば当たりだが、そうじゃなくて「引き分けなら賭け金返還」の対象試合を選ぶと、ドロー決着時にベットが無効になって stake が戻る。実質オッズが下がる代わりに、ドローという結果を消せる。
2つめは保険オプションとしての追加コスト。オッズを少し削る形でドロー時の返金を付ける。たとえば素のオッズが2.10のところ、保険付きだと1.98になる、みたいな。この差が実質的な保険料になる。
3つめはプロモとしての無料保険。一定額までのドロー返金がプロモで付く。これがいちばん「得した気」になるやつで、今回の検証でも最初の3日はこれが効いていた。
で、タイトルの「外したら」は、この3つめのプロモが切れたタイミングで、2つめの有料保険も付けずに素の1X2だけを張った、という状況を指す。特別なことをしたわけじゃない。ただ、いつものように保険を積まなかっただけ。
検証の条件を先に書いておく
- 対象: 欧州5大リーグ+国内主要リーグの1X2、3日間(金土日)
- 絞り込み: オッズ1.70〜2.40のホーム/アウェイ、ドローは2.90〜3.60
- 1ベット3,200円均等、287ベット
- 保険あり期間: 金曜と土曜の一部、計181ベット
- 保険なし期間: 土曜後半〜日曜、計106ベット
保険ありの181ベットで回収率94.2%、保険なしの106ベットで88.1%。単純比較には限界がある(後半のほうがオッズ帯が偏った、試合数が少ない)けど、方向としてははっきり出た。ドロー決着は全体で31試合、うち保険あり期間が22、なし期間が9。保険なし期間の9試合、素の1X2でドローに張っていなければ全部外れている。ここが効いている。
6%の正体は「ドロー率」と「オッズの削られ方」の掛け算
回収率が6ポイント落ちるメカニズムはシンプルで、2つの要素の積だ。
ひとつはドロー率。今回の287試合、ドロー決着は31で10.8%。リーグや組み合わせで振れるけど、1X2を絞り込んで張るとき、この1割前後が「保険で消えていたリスク」になる。保険あり期間のドロー率は12.2%(22/181)、なし期間は8.5%(9/106)。サンプルが小さいので偶然の振れはある。ただ、なし期間にドローが少なかったのに回収率が落ちた、という点がむしろ本質で、ドローが少ない=保険の恩恵が少ない期間に、保険を外していた、というタイミングの悪さが数字に出ている。
もうひとつはオッズの削られ方。保険付きのオッズは素のオッズより2〜6%低い。平均で見ると今回のデータでは約3.4%の目減りだった。つまり保険を付けている間は、当たったときの取り分が3.4%減っている。このコストをドロー返金が上回るかどうかが分岐点になる。
計算するとこうだ。素のオッズで張ってドローで外れる損失期待値と、オッズを3.4%削ってドローを消すコスト。ドロー率が10.8%前後なら、保険のコスト(3.4%)はドロー率×損失額でだいたいペイする。逆にドロー率が8%を切るような試合選びをしていると、保険は割高になる。今回の「なし期間」はドロー率8.5%だったので、実は保険を付けていたほうが数字は良かった可能性が高い。付けなかったから落ちた、というより、付けるべき局面で付けなかった、が正確だ。
3日目に何が起きたか
日曜の後半、オッズ1.70〜1.90のホーム人気が妙に多くて、この帯はドローに転びやすい。実際、日曜の9ドローのうち5つがこの帯だった。保険なし期間の後半にこの帯が集中していて、ここで素の1X2を張っていたら、ドローは全部外れ。保険があれば返っていた5ベット、3,200円×5で16,000円。これが回収率の差の半分近くを説明する。
残りはオッズの削られ方が小さかったこと。プロモの無料保険はオッズを削らないので、コストゼロでドローを消せていた。それが切れて有料保険に切り替えるタイミングで「コストがもったいない」と判断して外した。この判断自体は合理的に見える。ただ、外した3日目がたまたまドロー多発帯だった。結果だけ見れば6%の下落。
保険を「外す」判断はどこで間違えやすいか
ここが実務的なところ。ドロー保険を外すかどうかは、大きく3つの局面で判断が分かれる。
プロモが切れた直後。無料保険に慣れていると、有料保険のコストが高く感じる。でも無料だったのはプロモであって、素の状態に戻っただけ。ここで「保険なし」を選ぶと、オッズの目減りは消えるがドローリスクが戻る。今回の6%はまさにここ。
オッズ帯を絞りすぎたとき。1.70〜1.90のホーム人気はドロー率が上がりやすい。この帯で保険を外すのは、いちばん外したらあかんところ。逆に2.20〜2.40のアウェイ寄りはドロー率が相対的に低く、保険コストが見合わないことがある。
連敗が続いたとき。「保険なんか意味ない」と感じて外す。これがいちばん危ない。連敗はドロー率の偏りで起きていることが多く、そこで保険を外すと偏りをまともに食らう。
数字で言うと、今回のデータではオッズ1.70〜1.90帯のドロー率は14.3%(7/49)、2.20〜2.40帯は9.1%(4/44)。帯で1.5倍近く違う。保険の要否をオッズ帯で振り分けるだけで、回収率のブレはかなり抑えられるはずだ。
保険を外すなら「外す条件」を先に決めておく
感情で外すとだいたいロクなことにならない。おすすめは、外す条件を先に数字で決めておくこと。たとえば「オッズ2.20以上かつドロー率が直近20試合で8%未満のリーグだけ保険なし」「それ以外は保険あり」みたいに。今回の検証なら、このルールで運用していれば6%の下落のうち4ポイント近くは防げた計算になる。
もうひとつ、保険なしで運用するなら賭け金を落とす。保険ありのときと同じ stake で張ると、ドローリスクがそのまま金額に出る。保険あり期間の平均 stake 3,200円に対して、なし期間は2,600円くらいに落としておけば、6%の回収率下落は金額ベースで3%台に収まる。回収率の数字に一喜一憂するより、金額で見たほうが判断しやすい。
日本のユーザーが特に注意したい2点
海外サイトと国内事情で違うところがある。
ひとつはドロー保険の法的位置づけがサイトごとに曖昧なこと。プロモとしての返金は「キャッシュバック」扱いで、出金条件が付くことがある。今回の検証でも、無料保険の返金分はボーナス残高に入っていて、出金までに3倍の賭け条件があった。回収率の計算上は「返ってきた」ことになっているけど、実際に現金で抜けたわけじゃない。ここを混同すると、数字ほど手元は増えていない、ということが起きる。
もうひとつは為替と決済コスト。円建てで見ていると、ドル建ての stake と返金のレートが日によってズレる。3日間で1円動けば、91万円の賭け金に対して数千円単位でブレる。6%の差(5万6,000円)と比べれば小さいけど、無視できる額でもない。
責任ある賭け方の話を少しだけ。保険があると「ドローを消せる」安心感で stake が上がりやすい。今回の検証でも、保険あり期間の平均 stake は3,200円、なし期間は2,600円で、保険があるほうが多く張っていた。保険はリスクを消す道具であって、賭け金を増やす口実じゃない。ここは意識しておいたほうがいい。1日の上限を決めて、保険の有無に関係なくその範囲で収める。当たり前だけど、これができている人はそもそも6%やそこらで一喜一憂しない。
で、保険は付けるべきなのか
結論を出すつもりはない。ただ、今回の3日間で言えるのは、「保険を外したら回収率が落ちた」のではなく「保険を外すタイミングと、外した日の試合選びが噛み合っていなかった」ということ。6%という数字は、保険そのものの価値というより、外す判断の粗さを映している。
じゃあ、いつ外すのが正解なのか。ドロー率が構造的に低いリーグ・オッズ帯を特定できて、かつ stake を落とせるなら、保険なしのほうがオッズの目減り分だけ得になる局面はある。逆に、プロモが切れた直後や連敗中、人気帯のホームに張るときは、コストを払ってでも保険を残したほうが数字は安定する。今回のデータなら、その境界はだいたいオッズ2.10前後、ドロー率10%前後にありそうだ。287ベットじゃ心もとないので、これはあくまで仮説。
次の検証は、保険の有無をオッズ帯で振り分けて、同じ3日間を別の週で回してみる。6%が再現するのか、それとも日曜の偏りだったのか。そこが見えたら、また数字を出す。