プリフロップのオープンサイズを3BBから2.5BBに変えただけで、フロップでのフォールド率が11%動いた——これは6max NL50〜NL100のレンジで、同一プレイヤープール約4万ハンドを2つのサイズで回したトラッキングの結果だ。数字だけ見ると「たった0.5BBで?」と思うかもしれないが、相手のディフェンス頻度はこちらのベット額にかなり素直に反応する。今回はこの11%の中身を分解して、どこで差が出て、どこでは出なかったのかを見ていく。

まず前提:何を測って、何を測っていないか

最初に断っておくと、これはGTOソルバーの出力比較ではない。実プレイのハンドヒストリーを後追いで集計したもので、相手はレギュラーからルースパッシブまで混在している。サンプルはNL50が約26,000ハンド、NL100が約14,000ハンド。期間は2024年11月から2025年2月までの約3か月半。同一人物が同じテーブル帯で、前半6週を3BBオープン、後半8週を2.5BBオープンで打った連続データを、ポジションと相手タイプで層別した。

測ったのは「自分がプリフロップでオープンし、BB(またはコールした相手)がフロップでベットにフォールドした率」。つまりフロップCBに対する降り率だ。ここを混ぜると話が濁るので、リンプ pot や3ベット pot は除外した。シングルレイズ pot の、しかも自分がプリフロップアグレッサーでポジションを持っているケースだけを抽出している。

測っていないのは、ショーダウン後の期待値そのものだ。降り率が動いても、降りられた側が強いハンドを降りているなら意味がない。だから後半でEVの話も少しだけ触れる。ただしメインは頻度の話だ。

なぜ0.5BBで頻度が動くのか

プリフロップのオープン額は、相手のコール範囲の広さを直接決める。3BBオープンならBBはポットオッズ的にタイトに守る。2.5BBなら必要勝率が下がるので、BBのディフェンス範囲は広がる。ここまでは教科書通り。

問題はその先で、広がったディフェンス範囲は「フロップで降りやすいハンド」を多く含む。スーテッドコネクタの下位、オフスートのブロードウェイ弱め、弱いA。これらはフロップで何もヒットしない確率が高い。つまりプリフロップで広くコールさせた分、フロップのフォールドが増える。11%という数字は、この連鎖の見かけの合計値だ。

逆に言えば、相手がタイトにしかコールしないプールでは、この効果はほとんど出ない。実際、後で見るように相手タイプ別で差がかなり開いた。

ポジション別:BTNオープンで差が最も大きく、UTGでほぼ消えた

集計をポジション別に割ると、はっきりした偏りが出た。

オープンポジション 3BB時のフロップ降り率 2.5BB時のフロップ降り率 差
UTG 47.2% 48.1% +0.9pt
MP 48.6% 52.4% +3.8pt
CO 50.1% 57.9% +7.8pt
BTN 51.3% 62.6% +11.3pt
SB(vs BB) 49.8% 58.2% +8.4pt

タイトルの11%はBTNオープンの数字だ。全体平均で見ると+6.4ptくらいに落ちる。「11%動いた」は正確には「BTNオープン時に限れば11pt動いた」と読むべきで、ここを一般化すると数字が独り歩きする。

なぜBTNで最も動くのか。BTNはオープン範囲が最も広く、相手のコール範囲も最も広い。範囲が広い同士の衝突なので、プリフロップのオープン額がコール範囲に与える影響が一番大きい。UTGは元々タイトなレンジで、相手もタイトに反応するから、0.5BBの差がコール範囲をほとんど動かさない。+0.9ptは実質ノイズだと思っていい。

SB vs BBは特殊で、SBはポジションがないのにオープンする。ここは2.5BBにするとBBのディフェンスが跳ね上がる代わりに、フロップでCBを打った時の降り率も上がる。ただしSBはフロップ以降OOPなので、降り率が上がってもこちらのEVが素直に増えるとは限らない。この点は後で触れる。

3ベット頻度は動いたか

オープンサイズを下げると、相手の3ベット頻度が上がるのではという懸念がある。これも見た。

3BB時の3ベット率はBTNオープンに対して8.9%、2.5BB時は10.4%。+1.5pt。思ったより動いていない。理由は単純で、多くのプールは3ベットを「ハンドの強さ」で決めていて、オープン額に対するポットオッズで決めていないからだ。レギュラー層でもこの傾向は強い。つまり2.5BBに下げた時のリスク(3ベットを受ける頻度増)は、理論値より小さく出やすい。

ただしNL100のレギュラー層だけ抜くと3ベット率は8.2%→11.1%と+2.9pt動いていた。相手のレベルが上がるほど、オープン額に反応するようになる。このへんはプールの質で読み替える必要がある。

相手タイプ別:ルースパッシブ相手に効果が集中した

これが一番実務的な発見だった。相手をコール頻度で3分類して、フロップ降り率の変化を見た。

  • タイト(VPIP 22%未満):3BB 44.1% → 2.5BB 45.6%(+1.5pt)
  • 標準(VPIP 22〜30%):3BB 50.3% → 2.5BB 57.2%(+6.9pt)
  • ルース(VPIP 30%超):3BB 52.7% → 2.5BB 64.8%(+12.1pt)

効果はほぼルース層に集中している。タイト層は2.5BBにしても「元々コールするハンド」しかコールしないので、フロップの構成が変わらない。当たり前といえば当たり前だが、この非対称性は実戦でめちゃくちゃ使いやすい。

テーブルにルースなプレイヤーが2人以上いるなら、2.5BBオープンはフロップの降り率を稼ぎやすい。逆に全員タイトなテーブルなら、オープンサイズを下げる意味はほぼない。サイズを固定するのではなく、席の構成で変えるのが正解に近い。

ただし注意点がある。ルース層の降り率が上がるのは「フロップで何もヒットしなかった時」の話で、ヒットした時はしっかりコールしてくる。つまり降り率が上がる分、バレルを打った時の被コール率も上がる。ターン以降のバレル頻度を同じにしていると、思ったよりブラフが通らなくなる。実際、このデータでもターンのダブルバレル成功率は2.5BB時に少し下がっていた(後述)。

フロップ降り率が上がってもEVが上がるとは限らない理由

ここが今回一番書いておきたい部分だ。降り率11%増は派手に見えるが、EVに直結しない。理由は3つある。

1つ目、降りられるハンドの質。2.5BBで新たにコールしてくるハンドは、フロップで降りやすい代わりに、ヒットした時の強さが偏っている。具体的にはスーテッドの下位コネクタや弱いAが多い。これらはフロップでミスすれば降りるが、ヒットした時はこちらのTPTKすら捲くれる可能性を持つ。降り率が上がった分、ヒット時の被弾コストも上がっている。

2つ目、ターン以降のバレル効率。フロップで降りる相手が増えると、フロップCBの成功率は上がる。だがターンまで残った相手は、2.5BBコール範囲の中でも比較的強い部分に絞られている。結果としてターンのダブルバレル成功率は3BB時52.4%→2.5BB時49.8%と、2.6pt下がった。フロップで稼いだ分をターンで少し返している形だ。

3つ目、3ベット pot への波及。オープン額を下げると、3ベットされた時のポットサイズも相対的に大きくなる。3BBオープンに3ベット9BBと、2.5BBオープンに3ベット8BBでは、後者の方がSPRが微妙に変わる。この差は小さいが、3ベット pot の頻度が高いプールでは無視できない。

つまり「フロップ降り率11%増」は、単独では成果指標にならない。フロップCBの成功率、ターン以降の継続率、そしてショーダウンまでのEVをセットで見ないと、サイズ変更の良し悪しは判断できない。今回のデータでは、トータルのEVは2.5BBの方がわずかに上だった(100ハンドあたり+1.8BB相当)が、これはルース層が多いテーブルに偏っていた影響が大きい。タイトなテーブルだけ抜くとほぼ互角、もしくは3BBがわずかに上だった。

数字をどう使うか

この手のトラッキングでよくある誤解は、「降り率が上がった=良い変更」と短絡することだ。降り率はあくまで中間指標で、最終指標はEV。降り率が上がってもEVが横ばいなら、それは「降りられた分、別のところで損している」ということだ。

実務的には、オープンサイズを変えたら最低でも以下の3つを同時に追いたい。

  • フロップCB成功率(ベットした時のフォールド率)
  • ターン・リバーまでの継続率(相手が残る割合)
  • 100ハンドあたりのEV(可能ならポジション別)

この3つが揃って初めて、サイズ変更の是非が言える。降り率だけ見て2.5BBに固定するのは、データの読み方として片手落ちだ。

日本のプールで同じことが起きるか

ここからは推測を含む。日本のオンラインポーカープールは、NL50前後だとレギュラーとカジュアルが混在していて、VPIP30%超の層が欧米プールよりやや多い印象がある。もしそうなら、2.5BBオープンの効果は出やすい側だ。特に夜間のテーブルはルース層が増えるので、フロップ降り率の恩恵を受けやすい。

一方で、NL100以上になるとレギュラー比率が上がり、3ベット頻度もオープン額に反応するようになる。この帯では2.5BBのメリット(フロップ降り率増)とデメリット(3ベット頻度増、ターン以降の被コール増)が相殺しやすい。実際、NL100のタイト層だけ抜くと降り率の差は+1.5ptしかなかった。この帯でサイズを下げるなら、相手の3ベット頻度を個別に見てからの方がいい。

ちなみに、この手の検証を自分でやるなら最低1万ハンドは欲しい。ポジション別・相手タイプ別に割ると、4万ハンドでもセルごとに数百ハンドまで薄くなる。11%という差が統計的に意味を持つのは、せいぜいBTNオープンの全体値くらいだ。細かいセルは「傾向の参考」程度に扱うのが安全。

責任あるプレイの話を少しだけ

サイズ調整の議論は数字が先行しがちだが、これはあくまで「同じプールで、同じ相手に、長く打ち続けた場合」の話だ。短期のセッションで11%の差を実感しようとしても無理がある。降り率が動くのは数千ハンド単位の集計値であって、1セッションの体感ではない。ここを混同すると、根拠のないサイズ変更を繰り返して、かえって自分のレンジを壊す。

あと、オンラインカジノやポーカールームでのプレイは、当然だが余剰資金の範囲で。降り率やEVの検証に夢中になると、セッションが長引きやすい。タイマーを決めて打つ、負けが込んだら降りる、みたいな基本線は、データ検証をしている時こそ守った方がいい。数字を追うあまり、プレイそのものが目的化するのは本末転倒だ。

で、結局2.5BBにすべきなのか

ここまでの話をまとめると、2.5BBが効くのは「BTNやCOで、ルースな相手が複数いるテーブル」という条件付きの場面だ。UTGやタイトなテーブルでは、3BBとの差はほぼ出ない。サイズを一律に変えるのではなく、ポジションと席の構成で使い分けるのが、この11%という数字の正しい使い方だと思う。

ただ、疑問は残る。今回のデータは同一人物の連続プレイで、しかも後半8週が2.5BBという順番になっている。前半と後半でプールの構成や自分のプレイスタイルが変わっていた可能性は否定できない。特に後半はサンプルが増えて、相手に読まれていたかもしれない。この順番効果を消すには、ABABのように交互に切り替える検証が必要で、それはまだやっていない。

もう1つ、降り率の差が「相手のコール範囲の変化」によるものか、それとも「こちらのCBサイズの変化」によるものかも切り分けられていない。2.5BBにした時、ポットが小さい分CBのサイズも自然に小さくなっていた可能性がある。フロップ降り率はCBサイズにも反応するので、オープン額の効果とCBサイズの効果が混ざっているかもしれない。次の検証は、オープン額だけ変えてCBサイズを固定する形でやりたい。