ポーカーのオールインで、コールしてくる相手が2人から3人に増えると、こちらの勝率はおおむね7%落ちる。正確には「1人増えるごとに7%前後」であって、3人目のコールが特別に重いわけじゃない。ただ、この数字を感覚で知っている人は多いのに、内訳を説明できる人は少ない。今回はハンドレンジとエクイティの計算をベースに、この7%がどこから来るのかを分解していく。
まず「7%」の出どころを確認する
具体例で見たほうが早い。6-maxのキャッシュ、100BB、CO(カットオフ)からAKo(オフスートのAK)でオープン、BTNが3ベット、SBがコール、BBがコール、BTNがオールイン、SBとBBがコール……というのは極端すぎるので、もっと単純化しよう。
シナリオA: こちらの手はAA。相手が1人、ランダムハンド相当(実際はそうじゃないが基準として)。エクイティは約85.2%。
シナリオB: 同じAAに、コールしてくる相手が2人。エクイティは約73.4%。
シナリオC: 3人。エクイティは約64.1%。
A→Bで11.8ポイント、B→Cで9.3ポイント落ちている。あれ、7%じゃないじゃないか、と思うだろう。そう、AAは「3人以上でも残る」側の手だ。7%という数字は、もっとレンジが広く、相手のハンドがバラけている場面——たとえばAKoやJJ、AQoあたり——で出てくる。
AKoで計算し直す。1人相手なら約65.3%、2人なら約48.9%、3人なら約37.6%。1→2で16.4ポイント、2→3で11.3ポイント。これも7%より大きい。
では7%はどこか。答えは「相手のコールレンジが狭く、かつこちらの手がドミネートされにくい中強度の手」のときだ。たとえば99で、相手がタイトなレンジ(TT+、AK、AQくらい)でコールしてくる場合。1人で約52%、2人で約38%、3人で約31%。2→3で7ポイント。ここでようやく7%に近づく。
つまり、タイトルにある「7%」は万能の数字じゃない。コール人数が増えるほどエクイティは落ちるが、落ち幅は手の強さと相手レンジの広さで変わる。 中強度のポケットペアやスーテッドブロードウェイで、相手がそこそこ絞ったレンジでコールしてくる、という条件が揃ったときに、だいたい7%前後になる。この前提を外すと数字は簡単に10%を超える。
なぜ「人数が増えると急に落ちる」のか
エクイティの減少は線形じゃない。ここが多くの人が誤解するポイントだ。
1人目のコールは、こちらのハンドがまだ「ベストハンド」である可能性を大きく残す。2人目が入ると、その2人のどちらかがドローを完成させる確率が単純に足し算に近くなる。3人目は、さらに「ブロッカーが効かない相手」が増える。
具体的に、こちらのAAに対して相手がランダムハンドだとする。1人なら勝率85.2%。2人なら73.4%。この差は11.8ポイント。3人なら64.1%で、差は9.3ポイント。減り幅は少しずつ小さくなる。これは「もう負ける確率が十分高いので、追加の1人が与える影響が相対的に小さくなる」ためだ。
一方、こちらの手がAKoのような「ショーダウンで勝つにはペアが必要」な手だと、話が変わる。1人で65.3%、2人で48.9%、3人で37.6%。2人目で16.4ポイント、3人目で11.3ポイント。AAよりAKoのほうが、人数増加に弱い。 これはAKoが「まだ何も完成していない」手だからだ。AAはすでに完成している。完成している手は、相手が増えても「抜かれなければ勝ち」だが、未完成の手は「完成させなければ勝ち」なので、相手が増えるほど完成確率が相対的に下がる。
ここに、ポーカーでよく言われる「オールインは人数が増えるほど弱くなる」の本質がある。弱くなるのは当たり前だが、どのくらい弱くなるかは、こちらの手が「完成済み」か「未完成」かで大きく違う。
コールレンジの内訳:相手が何でコールしてくるか
7%という数字を正確に理解するには、相手のコールレンジを分解する必要がある。ここが一番見落とされる。
相手がオールインにコールしてくるハンドは、大きく4つに分けられる。
- プレミアム(QQ+、AK):全体の約2.6%
- 中強度(99-JJ、AQ、AJs、KQs):約5〜7%
- スーテッドコネクター・小ペア(22-88、T9s〜54s):約10〜15%
- ブラフキャッチ(Axs、Kxs、たまにQJs):状況次第
ここで重要なのは、コール人数が増えると、2人目・3人目のレンジが「弱い方向にシフトする」 という点だ。最初のコーラーはプレミアムを持っている可能性が高い。2人目は「最初のコーラーが弱いかもしれない」と読んで、中強度でコールしてくる。3人目は「2人もコールしたならポットオッズがいい」と、さらに広いレンジでコールしてくる。
つまり、人数が増えるほど、こちらのエクイティを削るのは「強いハンド」ではなく「広いレンジの集合体」だ。これが7%という数字を「思ったより小さい」ものにしている。
たとえば、こちらのQQに対して、1人目がQQ+、AKでコール。2人目が99-JJ、AQ、AJsでコール。3人目が22-88、T9s〜54s、Axsでコール。この3人相手のQQのエクイティは、おおよそ31〜34%になる。1人相手(QQ+、AKのみ)なら約47%。差は13〜16ポイント。7%より大きい。
では7%になるのはどんなときか。こちらの手が99で、相手3人が全員「TT+、AK、AQ」のタイトレンジでコールしてくる場合。 このとき99のエクイティは約31%。1人なら52%、2人なら38%。2→3で7ポイント。これがタイトルの数字の正体だ。
要するに、7%は「相手が全員タイトにコールしてくる」という、かなり限定的な条件での数字だ。実際のゲームでは、3人目のコーラーはもっと広いレンジで入ってくるので、エクイティの落ち幅は7%より大きくなることが多い。
ブロッカーの影響
もう一つ、人数が増えると効いてくるのがブロッカーだ。
こちらの手がAKoのとき、相手がAAやKKを持っている確率は、こちらのAとKが1枚ずつ減っている分だけ下がる。これは1人相手でも3人相手でも同じように効く。ただし、人数が増えるほど「ブロッカーが効く相手」と「効かない相手」が混在する。
たとえば、こちらのAKoに対して、1人目がQQ、2人目がJJ、3人目がTTでコールしてきたとする。この場合、こちらのAとKはブロッカーとして機能していない(相手はQJ Tしか使っていない)。つまり、こちらのエクイティは「純粋にペアを完成させる確率」に依存する。AKoがフロップでペア以上を作る確率は約32.4%。3人相手にこの確率で勝負すると、リバーまでの5枚で考えると、エクイティは37%前後になる。
逆に、相手がAAやKKを持っている場合、こちらのAKoはドミネートされている。このときのエクイティは約7%まで落ちる。人数が増えると、この「ドミネートされている相手」が混ざる確率が上がる。 これが7%の落ち幅の一因だ。
実戦での判断:7%をどう使うか
ここまでで、7%という数字が「条件付き」であることは理解してもらえたと思う。では、実戦でどう使うか。
まず、オールインの判断で「人数が増えると勝率が7%落ちる」をそのまま使うのは危険だ。 なぜなら、7%は「タイトレンジのコールが3人」という特定の条件下での数字であり、実際のゲームではレンジが広がるからだ。
代わりに使うべきは、「コール人数が1人増えるごとに、エクイティはおおむね10〜15%落ちる」という感覚だ。これは相手のレンジが広めのときの数字で、こちらの手が中強度以上ならこれくらいの落ち幅になる。
具体的な判断基準を挙げる。
- AA、KK:3人コールでもエクイティは60%前後残る。オールインして問題ない。
- QQ、JJ:3人コールでエクイティは35〜45%。ポットオッズ次第だが、オールインはギリギリ。
- AKo、AQo:3人コールでエクイティは30〜38%。オールインはかなり薄い。
- 99-77:3人コールでエクイティは25〜32%。オールインは基本的に損。
- スーテッドコネクター:3人コールでエクイティは20〜28%。オールインは論外。
ここで注意したいのは、「エクイティが50%を切っていても、ポットオッズが合えばコールは正しい」 という点だ。たとえば、こちらのエクイティが35%で、ポットオッズが3:1(必要勝率25%)なら、コールはプラスEVになる。オールインの判断は、エクイティだけでなく、ポットの大きさと必要な勝率で決める。
ただ、日本のアミューズメントカジノやオンラインポーカーでは、トーナメントの終盤で「3人コールのオールイン」を避ける傾向がある。 これはエクイティの減少だけでなく、バストしたときのリスク(トーナメントからの脱落)が大きいからだ。キャッシュゲームならまだしも、トーナメントでは「7%の落ち」が命取りになる。
具体的な数字で確認する
もう少し具体的な数字を出しておく。以下は、各ハンドが3人コール(レンジ:TT+、AK、AQ、AJs、KQs)に対して持つエクイティの目安だ。
- AA:約64%
- KK:約57%
- QQ:約46%
- JJ:約40%
- TT:約35%
- AKo:約37%
- AQs:約34%
- 99:約31%
- 88:約28%
この表を見ると、QQ以下は3人コールでエクイティが50%を切る ことがわかる。つまり、3人コールのオールインは、QQ以下では「有利」とは言えない。ポットオッズが相当良くない限り、コールすべきではない。
逆に、AAとKKは3人コールでも50%を超える。これは「3人相手でもまだ有利」という意味だ。ただし、これは「相手がタイトレンジでコールしてくる」という前提での話。相手がルースにコールしてくるなら、AAのエクイティはもう少し上がる(相手のハンドが弱い分、こちらの勝率が上がる)。
ここで一つ、面白い数字を紹介する。3人コールのオールインで、こちらの手がAAの場合、相手3人が全員「ランダムハンド」ならエクイティは約64%。相手3人が「TT+、AK、AQ」ならエクイティは約64%。 ほとんど変わらない。これは、AAが「相手のレンジに関係なく強い」ことを示している。
一方、AKoの場合、相手がランダムならエクイティは約48%。相手がタイトなら約37%。11ポイントも違う。 つまり、AKoのような「未完成の強い手」は、相手のレンジに大きく依存する。これが、7%という数字が「AKoでは通用しない」理由だ。
オンラインとライブでの違い
日本のプレイヤーが気にするのは、オンラインとライブ(アミューズメントカジノ)での違いだろう。ここも数字が変わる。
オンラインポーカー、特にZoomやFast-Foldのような形式では、3人以上のコールが発生する頻度が低い。 なぜなら、プレイヤーがタイトにプレイする傾向があり、オールインにコールするのはプレミアムだけだからだ。この場合、7%という数字は「ほぼ当てはまる」が、そもそも3人コールの場面が少ない。
一方、ライブのアミューズメントカジノでは、3人以上のコールが頻繁に発生する。 そして、コールするレンジがオンラインより広い。この場合、7%という数字は「過小評価」になる。実際には10〜15%の落ち幅になることが多い。
たとえば、東京のアミューズメントカジノでよく見る光景:こちらのQQでオールイン、相手3人がコール。相手のハンドはA8o、KJo、77だった、というのは珍しくない。この場合、QQのエクイティは約45%程度。1人相手(A8o)なら約70%。差は25ポイント。7%どころではない。
つまり、「7%」はあくまで「相手がタイトにコールしてくる」という前提での数字であり、ライブのルースなゲームでは通用しない。 この違いを理解しておくことが、実戦では重要だ。
日本での注意点
日本のアミューズメントカジノは、賭博ではなく遊技として運営されている。そのため、オンラインカジノとはルールやレーキが異なる。特に、オールインの上限が設定されている場合がある(たとえば、1ハンドあたりのベット上限が決まっている)。この場合、エクイティの計算はさらに複雑になる。
また、日本のプレイヤーは「オールイン=強い手」というイメージを持ちやすいが、実際にはオールインは「相手にコールさせる」ための手段であり、必ずしも最強の手である必要はない。セミブラフのオールインも有効だ。ただし、3人以上にコールされると、セミブラフのエクイティは急落する。たとえば、フラッシュドロー+オープンエンドのコンボドロー(エクイティ約54%対1人)は、3人相手だと約28%まで落ちる。これは7%どころか26%の落ち幅だ。
で、結局どうすればいいのか
ここまでの話をまとめると、こうなる。
- 「3人以上のコールで勝率が7%落ちる」は、条件付きの数字。
- 条件は「こちらの手が中強度(99〜JJ、AKo、AQsあたり)で、相手がタイトレンジでコールしてくる」場合。
- 相手のレンジが広い、またはこちらの手がAA/KKなら、落ち幅はもっと小さい。
- こちらの手が未完成のドローやブロードウェイなら、落ち幅はもっと大きい(10〜25%)。
実戦では、「7%」という数字を暗記するより、「コール人数が1人増えるごとにエクイティは10〜15%落ちる」という感覚を持っておくほうが役に立つ。 そして、ポットオッズと照らし合わせて、コールかフォールドかを決める。
最後に一つ、考え