ポーカーのオープンレイズを3BBから4BBに上げると、勝率はどう動くのか。6人掛けキャッシュゲーム(ブラインド1/2、100BB持ち込み)で、同じ相手・同じ時間帯に3BBレイズを1000ハンド、4BBレイズを1000ハンド、合計2000ハンドを回して記録を取った。結果はというと、BB/100で見ると3BBが+8.4、4BBが+11.9。数字だけ並べると4BBの勝ちに見えるけれど、内訳を開くと単純な話ではない。

なぜ3BBと4BBを比べたのか

オンラインのマイクロ・ローステークスでは、プリフロップのオープン額は2.5BBから3BBが長らく標準だった。ところが2023年あたりから、GTO系のソルバー出力やトレーニングサイトの推奨が4BB側に寄り始めた。理由はシンプルで、レイクが取られる環境ではポットを大きくしたほうがよい、という理屈だ。日本のアミューズメントポーカーでも、レイクが1ポットあたり最大で数百円単位で引かれる店舗が増えている。小さいポットをたくさん取っても、レイクで削られて手元に残らない。

ただ、ソルバーの推奨は「相手がGTO通りに降りてくる」前提の数字だ。実際の1/2のテーブルには、リンプで入ってくる人、どんな額でもコールする人、3ベットしかしない人が混在している。だから自分の手で測るしかない、というのが今回の動機だった。

計測条件を先に書いておく。

  • ブラインド1/2(日本円換算でおおよそ150/300円の感覚)
  • 6人掛け、100BB持ち込み、離席時は自動で座を立つ
  • 3BBレイズ期:2025年1月6日〜1月19日、1000ハンド
  • 4BBレイズ期:2025年1月20日〜2月2日、1000ハンド
  • オープンするハンドレンジは両期で同一(ポジション別に固定したチャートを使用)
  • 3ベット以上のアクションは集計から除外し、シングルレイズドポットのみ追跡

期間を分けたのは、同じ日に両方を混ぜると相手がレイズ額の変化に適応してしまい、比較が濁るからだ。とはいえ、この方法にも限界はある。後半の2週間で相手の顔ぶれが完全に同じとは限らない。そこは後で触れる。

全体の数字:4BBが上、ただし分散が大きい

まず全体の結果から。

指標 3BBレイズ 4BBレイズ
ハンド数 1000 1000
BB/100 +8.4 +11.9
オープン成功率(全員フォールド) 41.2% 47.8%
ポット参加者平均人数 2.6人 2.1人
フロップ到達率(レイズ後) 68.5% 59.3%
1ハンドあたり平均ポット(BB) 7.8 10.4

注目したいのは、BB/100の差(+3.5)より、ポット参加者平均人数の差だ。3BBだと2.6人、4BBだと2.1人。つまり4BBに上げると、平均で0.5人分コーラーが減る。この0.5人が、そのまま勝率の差になって表れている。

オープン成功率は41.2%から47.8%へ、6.6ポイント上がった。1000ハンド中のオープン回数は3BB期が約310回、4BB期が約305回でほぼ同じ。そのうち誰にもコールされずにブラインドを取れた回数は、3BB期が128回、4BB期が146回。18回分、何もせずにポットを拾える回数が増えている。ブラインド1/2なら、1回あたり3BB(=6ドル)なので、単純計算で108ドルの差だ。1000ハンドで108ドルというのは、BB/100に直すと約+5.4BB/100に相当する。実際のBB/100の差+3.5より大きいのは、4BB期のほうがコールされたときの負けが少し大きかったためだ。

ポジション別に見ると、話が変わる

全体の数字だけ見ると「4BBに上げ得」で終わってしまう。けれどポジションごとに割ると、効いている場所と効いていない場所がはっきり分かれた。

BTN(ボタン)とCO(カットオフ)

後半ポジションでの差が最も大きかった。

ポジション 3BB BB/100 4BB BB/100 差
BTN +18.2 +26.5 +8.3
CO +12.1 +17.4 +5.3
HJ +4.8 +5.1 +0.3
UTG -2.1 -3.8 -1.7

BTNとCOで4BBが明確に勝っている。理由は想像しやすい。後半ポジションのオープンは相手に「またこいつか」と思われやすく、3BBだとブラインドが軽くコールしてくる。4BBにすると、その軽いコールが減る。特にBTNは、SBとBBのディフェンス頻度が直接勝率に効く。SBのコール率は3BB期が38.4%、4BB期が29.1%と9.3ポイント下がった。BBのコール率も52.7%から44.6%へ8.1ポイント下落している。この2つの減少が、BTNの+8.3BB/100につながっている。

UTGとHJは逆に悪化

一方で、UTG(アンダー・ザ・ガン)は-2.1から-3.8へ悪化した。HJはほぼ横ばい。これはレンジの問題だ。UTGのオープンレンジは元々タイトで、4BBに上げてもフォールドをもらいにくい。相手から見ると「UTGが4BBで開けてきた=強い」と読まれやすく、逆にコールか3ベットで返ってくる。実際、UTGオープンに対する3ベット率は3BB期が8.9%、4BB期が11.4%と2.5ポイント上がった。3ベットが増えると、こちらはフォールドせざるを得ない場面が増え、その分の損失が乗る。

つまり「4BBに上げれば勝てる」は半分正解で半分間違いだ。BTNとCOでは効く。UTGでは逆効果になり得る。

4BBが効かなかった相手:コーリングステーションと3ベッター

ここが今回いちばん面白かった部分だ。相手のタイプ別に分けると、4BBの効果がまったく出ない層がいる。

計測中、同じテーブルで何度も同席した相手をざっくり3タイプに分類した。

  • タイト:参加率20%以下、3ベット率7%以上
  • ルースパッシブ(コーリングステーション):参加率45%以上、3ベット率3%以下
  • ルースアグレッシブ:参加率35%以上、3ベット率10%以上

このタイプ別に、4BBレイズがどれだけ機能したかを見る。

相手タイプ 3BBでのオープン成功率 4BBでのオープン成功率 差
タイト 52.1% 63.4% +11.3
ルースパッシブ 28.7% 30.2% +1.5
ルースアグレッシブ 33.5% 35.8% +2.3

タイトな相手には4BBがよく効く。11.3ポイントもフォールドが増える。ところがルースパッシブ、いわゆるコーリングステーションにはほぼ無意味だ。1.5ポイントしか変わらない。彼らは額を見ていない。3BBでも4BBでもコールする。むしろ4BBにした分だけ、こちらが不利な状況で大きいポットを作ることになる。

ルースアグレッシブも+2.3ポイントしかない。彼らはレイズ額に関係なく3ベットで返してくる。4BBに上げると、3ベットのサイズも連動して大きくなり、こちらが降りたときの損失が膨らむ。3BB期の3ベット被弾時の平均損失は8.2BBだったが、4BB期は11.6BBに増えた。3.4BB分の悪化だ。

ここから言えるのは、レイズ額は「相手の構成」で決めるべきだということ。テーブルにタイトな相手が多く、コーリングステーションが少ないなら4BBは有効。逆にコーリングステーションが2人以上座っているなら、4BBに上げても勝率は伸びない。むしろポットが大きくなる分、分散が増えてメンタルを削られる。

2000ハンドというサンプルの限界

正直に書いておくと、2000ハンドはポーカーの勝率を判断するには足りない。BB/100の標準偏差は、6人掛けキャッシュでおおよそ80〜100BB/100と言われる。仮に標準偏差を90とすると、1000ハンドあたりの標準誤差は約2.8BB/100。つまり+8.4と+11.9の差(+3.5)は、統計的に見ると誤差の範囲にかなり近い。95%信頼区間で考えると、この差が「本当に4BBの効果」なのか「たまたま後半の2週間が良かっただけ」なのかは、このデータだけでは切り分けられない。

実際、4BB期の後半5日間だけで+22.1BB/100を記録している。逆に最初の3日間は-4.3BB/100だった。同じレイズ額でも、日によってこれだけ振れる。ポーカーの短期成績がどれだけ運に左右されるか、あらためて思い知らされる。

ただ、ポジション別・相手タイプ別の内訳については、サンプルが小さいながらも方向性は一貫していた。BTNとCOで4BBが効くこと、UTGでは効かないこと、コーリングステーションには無意味なこと。これらは理論的な整合性もある。だから「絶対に4BBが正しい」とは言えないけれど、「ポジションと相手を見て使い分ける」という結論には、それなりの根拠がある。

レイクが絡むともう一段変わる

日本のアミューズメントポーカーや、レイクの高いオンライン環境では、話がもう一段複雑になる。レイクがポットから定率で引かれる場合、ポットが大きくなるほどレイク額も増える。たとえばレイク5%・キャップ3BBの環境で、平均ポットが7.8BBから10.4BBに増えると、1ハンドあたりのレイクは0.39BBから0.52BBに増える。1000ハンドで130BB分、レイクが多く引かれる計算だ。

この130BBは、4BBにして増えた勝ち分(+3.5BB/100 × 10 = 35BB)をはるかに超える。つまりレイクが重い環境では、4BBに上げてポットを大きくすることが、そのまま自分の取り分を減らす方向に働きかねない。ここはオンラインのレイクなし環境とは結論が変わるポイントだ。

レイクがキャップ制で、一定額を超えたらそれ以上引かれない店舗なら、話は別になる。キャップにすぐ到達するようなら、ポットを大きくしてもレイクの割合は下がる。自分の打っている環境のレイク体系を確認しないと、この数字はそのまま使えない。

で、結局どうするのか

2000ハンドを回して見えたのは、「3BBか4BBか」という二択そのものが粗すぎるということだった。正しくは「どのポジションで、どんな相手に、どんなレイク環境で」の掛け算になる。

  • BTN・COで、タイトな相手が多いテーブル → 4BB寄り
  • UTG・HJ → 3BBのまま、または2.5BBまで下げる選択も
  • コーリングステーションが2人以上 → 額を上げても無意味、ハンド選択を締める
  • レイクが定率・高キャップ → ポットを大きくするほど不利

次の計測では、レイズ額をポジションごとに変える(BTNは4BB、UTGは2.5BB)パターンを1000ハンド回して、固定額と比べてみたい。ただ、その前に確認したいのは、そもそも自分の勝率のブレがどこまで運でどこまで実力なのか、ということだ。2000ハンドで+8.4と+11.9を比べても、その差が本当に意味を持つのかどうか。ハンド数を5000、10000と増やしていけば見えてくるものは変わるのだろうか。それとも、レイズ額をいじるよりも先にやるべきことが、まだテーブルの上に転がっているのだろうか。